エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
 すぐに拓海は日菜子の背後にある休憩室から漏れ聞こえる声に気がついた。そして何かを察してすぐに日菜子の手を取り歩き出した。

「ちょ、ちょっと?」

 いきなりのことに抵抗すらできなかった。社内で手をつなぐなんて、どういうつもりだろうか。

「早くこの場から離れるぞ。それですぐに鞄をとってくるんだ」

「どうして?」

「いいから。ほら早くしないと、このまま手をつないでフロアまで入っていくぞ」

 そんなことをしたら、どうなってしまうのか。想像しただけでもパニックだ。

 日菜子はさっさとフロアに戻り、出来上がった仕事の資料に脇坂への伝言メモをはりつけて彼女のデスクに置いた。

 そしてすぐに鞄を手にもつと「おつかれさまでした」とフロアに声をかけて、拓海に来るように言われた駅前のコンビニまで急いだ。

 急いで駅前に向かいつつも、どうして拓海と待ち合わせをすることになったのだろうかと疑問に思う。そもそも約束なんか成立していたのだろうか。

 けれど待たせている事実がある以上、日菜子は急いで拓海の元に向かった。

「遅いぞ」

 コンビニの前で、彼は腕組みをして待っていた。

「ごめん。でもこれでも急いだんだよ」

 思わず恨み言を口にする。デスクの片付けもそこそこに息をきらせて駆けつけたのだ。

「まあいい。行くぞ」

「ちょっと、待ってどこに……って、わかった」

 日菜子は拓海に寿司をおごるという約束をしていたことを思い出した。そしてあわててコンビニに入っていこうとする。

「おい、どこに行くんだ?」

 腕を掴まれた日菜子は、拓海を振り返る。
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