エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「そんなに強がって、お前の心は誰が守るんだよ」

「……っ」

 いつもひとりで悩んできた。人から距離をとることで自分を守っていた。だけどそれじゃ、前に進めないことも気づいている。

「お前が傷ついたときに、傍で手を差し伸べたいと思うのはダメなのか? 過去になにがあったか知らないが、隣で支えたいと思うのは俺のわがままなのか?」

 拓海の目はまっすぐに日菜子に向かっている。強いその眼差しは彼がどれほど真剣なのかを伝えるには十分だ。

「……ありがとう」

「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか。どうしてそんな大きな眼鏡かけて自分を押し殺しているのか、知りたい」

 拓海の顔を見ると、真剣に日菜子に視線を向けていた。ただの好奇心やからかいで尋ねているのではないことがわかる。

 もうごまかせないと思った。自分の過去を聞いてほしいと思った。彼のおかげで長らく囚われていたトラウマから、やっと一歩を踏み出したのだ。だからこそ彼に話を聞いてもらいたいと思った。

 日菜子は重い口を開く。

「この話をするのは、美穂以外でははじめてなの。あまり面白くない話だけど聞いてくれる?」

 日菜子は勇気を出して拓海に過去の自分の話を打ち明けた。はっきりとはわからないけれど、自分に向き合ってくれている彼には知って欲しいと思ったからだ。

 昔のことなので落ち着いて話すことはできた。けれど思い出すと負の感情が胸に湧いてきて、所々言葉につまる。

 けれどそんな日菜子の話を拓海はだまったまま聞いていた。時折目につらそうな色を浮かべる彼をみて、日菜子は彼だから自分の過去のトラウマを話すつもりになったのだと思った。

 ひとつひとつ言葉を選びながら、当時のことやそのときの思いを言葉にする。聞いている拓海の表情は真剣だ。その態度が日菜子を安心させた。自分のことを理解しようと思ってくれている人がいることが、こんなにも心強いと感じたことはなかった。

 話し終えた後、拓海は視線を外の景色に移した。日菜子も彼の視線を追う。

「でもわたし、変わりたい」

 今までの日菜子にはなかった感情だった。けれど今日脇坂や男性社員の話を聞いて、あの場では逃げてしまったけれど悔しかったのも確かだ。今まではそんな感情すら浮かんでこなかったのに。
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