エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「今朝、給湯室が汚かったわ。ついでに掃除しておいてくれるかな?」
日菜子が「はい」と返事をしようとしたとき、隣の席に座っている後輩の斉藤花(さ
いとうはな)が声を上げる。
「今日はそちらの一課が当番のはずです。松風さんに頼むのはおかしくないですか?」
花はわりとはっきりとモノを言うタイプだ。先輩の脇坂にも物怖じしない。
「なんですって? 手の空いてそうな人に頼んだだけでしょう? 文句があるの?」
「でも!」
「斉藤さん、大丈夫だから。わたしが行ってきます」
花は心配そうに日菜子を見つめた。かたや脇坂は勝ち誇ったかのごとくにっこりと
笑った。
「じゃあ、松風さんお願いね」
そう言い残して去って行く。
「脇坂さんって、毎回松風さんに色々押しつけて、ちょっとひどくないですか? 掃
除ならわたしが行きますから」
「いいの、いいの。わたし別に掃除をすることは苦じゃないから。ありがとう、斉藤
さん」
花はまだ納得していないようで憤慨している。
「わたしこういうの慣れてるし。丸く収まるならそれでいいから」
花はせめて資料を運ぶのを手伝わせて欲しいと言ってきたが、彼女の仕事も山積み
だ。
丁寧に断って日菜子はデスクに山積みになった資料を「よいしょ」と持ち上げ資料
室に向かった。
よたよたと歩く。少し多すぎたと思いつつも一回で終わらせたい。資料の横から顔
をのぞかせて進行方向を確認しながら進む。