エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
 そしてドキドキする心臓あたりを抑えながら、ふらふらと部屋の真ん中まで進むとドサッと床に座り込んだ。

「……なにこれ」

 さっきまでの出来事を思い出す。それだけで胸の鼓動が早くなる。とくに拓海の笑顔を思い浮かべた途端苦しいくらいに早くなった。

 ぎゅっと胸の辺りに置いていた手を握りしめる。

 それでもおさえようのない感情が体中に広がっていく。

「わたし、南沢くんのこと……好きなんだ」

 自覚をした瞬間、頬がかぁと熱くなる。

 まさか自分がこんな感情を抱くことになるなんて思ってもいなかった。

 しかも相手は社内でもエリートと言われている同期。当然誰からも慕われている人気者だ。入社当時から知っているけれど、自分とは人種が違うと思っていた相手だ。

 〝高嶺の花〟という言葉が思い浮かぶ。いやこれまではあこがれを抱くことさえできなかった人。

(まさか……そんな相手を好きになるなんて)

 自分が恋をするなんて思わなかった。

 憧れを抱いていたけれど、まさか現実にこんなふうに抑えられない気持ちが自分に宿るなんて思ってもみなかった。

 恋愛なんて勝ち組のやること。負けっぱなしの日菜子にとっては遠い世界の話しのように思っていた。

 拓海の顔を思い浮かべると、苦しいような甘いような今まで味わったことのないような感情が湧き上がってくる。

 そんなどうしようもない感情を抱きながら、日菜子は新しい自分になるためのある決心をした。


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