エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「松風さーん。部長が呼んでますよー!」

 西野の言葉を、日菜子を探しにきた花の声がかき消す。

「すぐ行きます」

 返事をした日菜子は「失礼します」と頭をさげて、踵を返してフロアに向かった。

 席に着くまでに、さっきのことを思い出す。

 逃げずに自分の気持ちをぶつけられたこと。小さなことだが、日菜子にとっては大きな一歩だった。

 そんな自分に少しだけでも自信が持てた。それが日菜子にとってはうれしいことだった。
 
 その日の昼休み。日菜子は花と一緒に食堂に来ていた。職場の周りにもたくさん飲食店があるが、安くて美味しい食堂は社員にも人気だ。

 混雑している中、花が素早く確保した席で、日菜子は親子丼を花はミックスフライ定食を食べていた。

「今日の松風さんには、ほんと驚きましたよ~いきなりこんなに変わっちゃうなんて」

 エビフライを頬張りながら、あらためて日菜子をまじまじと見ている。

 花の視線にほんの少し動揺しつつも、嫌な気分にはならない。

「そうかな……ちょっと、気分転換」

「気分転換ってレベルじゃないと思うんですけど」

 何かをさぐるような視線に、居心地の悪さを感じた。

 そこに花がズバッと切り込む。

「もしかして、好きな人の為ですか?」

「えっ!?」

 正確に言えば違うのだが、あながち的外れではないことを言われてドキッとする。聡い花はそれを見逃さなかった。


「やっぱり、そうなんですね! ふ~ん。相手は……って聞いてもきっとおしえてくれないんだろうな。わたしの知ってる人ですか?」

「いえ、あのね。斉藤さん……」

「え~誰だろう。でも松風さんのことだから、一途にずっと思っていた~みたいな乙女な展開も似合いそうですよね」

 日菜子の話など耳に入らないのか、花はいろいろと妄想を始めてしまった。
< 66 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop