エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
そして誕生日当日。
仕事を終えた日菜子は、美穂と会社から離れた新幹線の乗り入れのある大きな駅で待ち合わせをしていた。
前日にいきなり『レストランを予約したから、おしゃれして来て』と言われ、あわてて準備した。ワンピースにジャケットを羽織ったので、職場でも浮くことなく仕事をこなしそのまま待ち合わせ場所に向かう。
いつも美穂とは自宅で会うか、わかばで合うことが多い。こういう機会は久しぶりだなと思いキョロキョロと美穂の姿を探していると、改札を出てすぐの壁際にスーツケースを持ったひとりの男性が立っているのに気がついた。
「南沢……くん?」
距離があるので日菜子の声が届くはずはない。けれど拓海はまるで彼女の声に反応したかのように彼女を見やった。
彼は手に持っていたスマートフォンをしまうと、スーツケースを引きながらこちらに向かってきた。
一瞬ぼーっとしてしまっていた日菜子だったが、あわてて彼の方へ駆け出す。
「どうしたの? 帰りって明日の予定じゃなかった?」
驚いた日菜子は「おかえりなさい」の一言もなしに、彼に問いかける。
「彼女の誕生日なんだ。帰ってきて当たり前だろ」
「え? どうして……」
驚いた日菜子に、拓海は小さくため息をついた。
「町田さんが連絡をくれたんだ。以前彼女の店を訪ねたときにに名刺を置いてきたから。それよりもなんで自分から言わないんだよ」
拓海の手が日菜子の腕にそっと触れた。
「だって……すごく忙しそうだし。誕生日は来年もあるでしょう?」
「なに言っているんだ。お前の今年の誕生日は今日しかないだろ。ほら行くぞ」
まだ戸惑っている日菜子をよそに、拓海は日菜子の手をひいて歩き出した。