あやかし神社へようお参りです。②
家の屋敷の前に車を止めていたらしく、三門さんは助手席へ私を促した。三門さんも運転席に乗り込むと、大きく息を吐きながらハンドルに突っ伏した。
「……社に飛び込んできた葵から話を聞いて、本当に心配したよ」
どうやら気を失う前に「社へ」と言ったのをちゃんと守ってくれたらしい。
ほっとするのと同時に、また心配をかけてしまったことに申し訳なさが募る。すみませんでした、と頭を下げると、三門さんは困ったように眉を下げながら私の頭に手を置いた。
「あの男の子の術が当たったって聞いたんだけれど、本当に何もないんだね?」
「はい、倒れた時に少し頭を打ったのと、かすり傷がいくつかなので」
もう一度深く息を吐いた三門さんは「良かった」と呟く。そしてふと顔をあげて不思議そうな顔を浮かべた。
「麻ちゃん、御守か何か持ってる?」
「御守、ですか?」
特に何も持っていないはずだけどな、と首を捻る。しばらく考え込んでいると、思い当たる節がひとつ浮かんで「あ」と声をあげた。
ティーシャツの首元から手を入れて、紐を掴んで引っ張り出す。社の宝物館にある御神刀の円禾丸から貰った切羽だった。ババに編んでもらった組紐にそれを通して普段から首に下げていたのだ。