あやかし神社へようお参りです。②
「円禾丸の切羽か。なるほど、それが麻ちゃんを守ってくれたんだね」
「円禾丸が……」
三門さんは一つ頷いてから鍵を回しエンジンをかけた。車はゆっくりと動き出し、景色は徐々に後ろへ流れていく。
「術者の術は直接体に働きかけるんじゃなくて、体を巡っている霊力────簡単に言うと不思議な力に影響を与えるんだ。血液に似たようなものかな。だから力を持っていれば誰でも影響をうける。術が害を与えるものなら、人も妖も関係なく害を受けるんだ」
そういうものなんだ、とひとつ頷いて自分の掌を見つめる。だから葵をかばって、術が当たった時に、激しい衝撃を受けたのか。あれでも円禾丸が守ってくれていたんだから、葵が当たっていたら……。そう考えるととても恐ろしかった。
「今日は夜中の間ババに来てもらうからね。具合が悪くなったら知らせるんだよ」
とても優しい声に胸がじんわりと熱くなる。私はひとつ頷いた。
窓の外の景色をぼんやりと眺めながら思い出す。三門さんのあんなにも怒った声を聴いたのは初めてだった。纏う空気は鋭く、一言一言が鋭利な刃物のように鋭かった。
あんなに怒っていても一番に私のもとへ駆け寄ってくれた三門さん。こちらへ来てからも相変わらず心配ばかりかけてしまっている。
少しはひとりでちゃんとできるように頑張らなきゃ。
そう心に決めてきゅっと唇を結んだ。