あやかし神社へようお参りです。②
「かげぬい、怪鳥のかげぬい。木陰を縫うように空を飛び回る、自由な妖」
おばあさんは身を乗り出して手を伸ばした。かげぬいの頬に触れる。かげぬいは壊れ物を扱うようにその手を上から包み込んだ。
「待っていました、あの木の上で」
「ああ、随分と待たせてしまったのね……」
「いいえ、昨日のことのようです。妖の一生は長い」
おばあさんは反対の手で自分の目じりを拭った。
「お互いに、年を取りましたね」
「ええ……そうね」
「でも貴方の瞳は変わらない。太陽のように輝いている。あの頃の私を照らしてくれた瞳のままだ」
「かげぬいは変わったわね。随分と優しくなったわ」
かげぬいは苦笑いを浮かべた。
「また、貴女を描いてもいいかしら」
「────今度は私が会いに来ます」
強く頷いてそう言ったかげぬい。その瞳は水面のようにきらきらと輝いていた。
ふと、賀茂くんがすっかり力を抜いているのに気が付いた。恐る恐る腕を解く。賀茂くんは戸惑うように眉根をよせて目を伏せた。彼の前に回り込んだ。どうしてもちゃんとつたえたいことだったから。