あやかし神社へようお参りです。②
「それより健一、なんでまたこんな時期に帰ってきたんだい」
「ああ、それが三門から連絡があってな。本部の坊ちゃんと揉めたんだって? 助けてって言うからわざわざ来てやったんだぞ」
ふふんと鼻を鳴らした健一さんに、三門さんは苦笑いを浮かべる。
「確かに電話はしましたけど……。僕は“結守の管轄地に本部が介入しているから、本部に問い合わせてください“としか言ってませんよ」
「そうだったか?」
しれっとした顔でお茶請けを口に放り込んんだ健一さん。三門さんはもうひとつ深くため息を吐いた。
先ほどから二人の間に登場する“本部”という言葉をどこかで聞いたことがあるような気がした。畳の縁を見つめながら記憶をたどっているとひとりの人物に行きついた。
『本部が聞いたらなんて言うだろうね』
魑魅の件で裏山へ来た賀茂くんの言葉だった。あの時も確かに本部と言っていた。
「面倒ごとばっかり押し付けやがって。本部と本庁が犬猿の仲なのはお前も知ってんだろ」
「ええ。でも僕よりも本庁に任せた方が波風が立たないので」
そうだけどよ、とぼやいた健一さんはまた湯飲みを一息に煽った。
話題は直ぐに昔話へと移り変わり、結局“本部”が何なのかを聞くタイミングを逃してしまった。