あやかし神社へようお参りです。②
「なにか用かな?」
柔らかい笑みを浮かべて首を傾げる男のひと。髪は美しいほど白く、頬にうっすらと雪の結晶の形をしたあざがある。夢で見たときはまだ私たちと同じくらいの歳だったけれど、今は二十くらいに見えた。
「六花、さん?」
「どうして私のことを、」
六花さんが目を瞬かせたその時、
「────兄や……?」
富岡くんが震える声でそう口にした。幼いころ、何度も何度も親しげに呼んでいたその呼び方で。
六花さんの目が次第に見開かれる。一歩、一歩と幻を追うように歩みを進め、そして富岡くんの前に立つ。震える手を伸ばし、壊れ物を扱うようにその頬に触れた。
「蛍雪……なのかい」
戸惑うようにその名を口にした。もう何十年と会っていなかったはずなのに、愛おしそうにその名前を呼ぶ声はなにも変わっていなかった。