あやかし神社へようお参りです。②
富岡くんが俯くように頷けば、六花さんはその背中に手を回して力強く抱きしめた。
六花さんの肩口に頭を押し付けた富岡くんは顔をくしゃくしゃにしてわっと泣き崩れた。ごめん、ごめん、と何度も謝る。
「おかえり、蛍雪」
ただ一言、それだけ言った六花さんの瞳にも涙が浮かんでいる。
なんて優しい声なだろう、そう思った。
富岡くんは六花さんに「兄やは温かさを知らない」と言い放って家を飛び出した。けれど、こんなにも慈愛に満ちた声を持つ人が、温かさを知らないなんて嘘だ。そしてその温もりを与え続けられてきた富岡くんが、それに気付かないはずがない。
ずっと意地を張ってしまっていたんだ。謝りたいのにできなくて、会いたいのに会えなくて。頑なになって、折れどころが見つからなくなって、そして気が付けば長い時間が経っていた。
「こら蛍雪。挨拶はきちんとしなさいと教えただろう」
富岡くんの両頬に手をあてて、六花さんは目を細める。富岡くんは涙を拭って笑った。
「ただいま、兄や」