あやかし神社へようお参りです。②



 最初に通った時よりも、通りを歩く妖の数が増えていた。隙間を縫うようにして進む。すると後ろの方から誰かの悲鳴が上がった。悲鳴は伝染するように広がり、徐々にこちらへ近付いてくる。


 「な、なに!?」

 「なりふり構わず追いかけてきている。足をとめるなっ」


 先頭を走っていたみくりがそう叫ぶ。

 その瞬間、耳元を素早い何かが通り抜けた。それと同時に頬に痛みが走り、つけていた迎門の面がからんと足元に落ちる。紐の部分が切れたのだ。あ、と咄嗟に足を止めた。皆の背中が遠ざかって行く。

 通りを歩いていた妖たちが一斉に振り返った。


 「人間だ」「人間がいるぞ」「なぜ人間が」


 そのまま足がすくんで動けなくなった。いくつもの目が向けられる。決して好意的なものではなかった。面を抱きかかえる手がガタガタと震え始めた。



 「さっさと走れ!」



 銀糸に近い髪色をした白い着流し姿の男が私の手を勢いよく引っ張った。声をあげる暇もなく肩に担ぐように抱きかかえられ、男はまた走り出す。よく見ると髪の隙間から獣の耳のようなものが見え隠れする。


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