しあわせ食堂の異世界ご飯４
　すると、じゅわあぁっと香ばしい匂いが厨房いっぱいに広がった。トマトの酸味が食欲をくすぐり、思わずカミルのお腹が鳴った。
「なんていうか、すげぇ美味そう……」
「うん、美味しいよ。私もエストレーラではたまに作って食べてたんだけど、最近は全然だったから」
　ケチャップも久し振りに作ったのだと、アリアは言う。
（エストレーラではよく作ってたんだけど、こっちにきてからは初めてだ）
　本来はミキサーがあればとても楽なのだけれど、ないためアリアが必死でトマトを潰した。そのため、ちょっとした手間がかかってしまう。
「へぇ、美味そうだな」
　早く食べたいと主張するカミルに、アリアは「まだだよ」とにんまり笑う。
「最後にちょっとした仕上げをしようと思うんだよね。カミル、卵を取ってもらってもいいかな？」
「卵？　もちろんいいぞ」
「ありがとう」
　アリアはフライパンを熱し油を引いて、その上で卵を割った。フライパンの上に落ちた卵はすぐ熱が入り、白身の部分が固くなっていく。
「目玉焼きなんて作るのか？」
　卵をただ焼くだけの目玉焼きは、この世界ではよく作られる一品だ。
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