しあわせ食堂の異世界ご飯4
 真っ先に食いついてきたのは、エストレーラでも食べたことのあるシャルルだ。香ばしい匂いに鼻をふんふんと鳴らして、今にも飛びかかりそうなほど。
「まず食べてもらうのは、ええと――」
 先ほどの女の子の前に行ってナポリタンを置いたアリアだが、名前がわからない。困って顔を見ると、にぱっと笑顔を返された。
「ナタリーだよ!」
「ありがとう、私はアリアだよ」
「うん、知ってるよ!」
 名前を教えてもらったのでアリアも自己紹介をしたのだが、相手はちゃんと把握してくれていた。あははと笑いながら、ナポリタンの説明をする。
「鉄板部分はすっごく熱いから、手で触らないように気をつけてね。取り皿を用意したから、お母さんに取ってもらおうね」
 五歳の子供なので、熱々の鉄板から直接……というのはさすがに怖い。アリアは母親にフォークと小皿を渡して、ナタリーが食べる分を取り分けてもらう。
「これは茹でた麺を野菜と一緒に炒めて、トマトソースを使った料理だよ。辛くないし、たぶん好きになってもらえると思うな」
 アリアがそういうと、ナタリーはこくりと頷いた。
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