しあわせ食堂の異世界ご飯4
 取り扱っている商品は一種類だけで、指先よりも小さくて白い魚だった。知っている人がいないせいか、露店は人気がないようだ。
 けれど、シャルルはこれに見覚えがあった。
「アリアこれって、『しらす』ですよね?」
「そう! まさか、しらすが本当に露店で売られる日がくるなんて!」
 今とても感動しているのだと、アリアはうっとりした表情で告げる。今夜の夕飯は、しらす丼で決まりかもしれない。
 そして思い出すのは、以前リントがしらすを持って訪ねてきたときのこと。
 港町でしらす漁を始めたので、上手くいけば流通すると言っていた。まさか突然そんな事業を始めて成功するのかと、アリアは内心不安もあった。
 しかしこうして販売しているところを見る限り、しらす漁は新しい事業として上手くいっているのだろう。
 生のままだとすぐ傷んでしまうので、ちゃんと釜揚げしらすの状態にして販売してくれているのも嬉しい。
 アリアとシャルルが楽しそうに話すのを聞いていた露店の店主が、とても嬉しそうに声をかけてきてくれた。
「しらすを知ってるなんて、驚いたよ」
「こんにちは」
< 157 / 202 >

この作品をシェア

pagetop