しあわせ食堂の異世界ご飯４
「お客さんに提供できるほどの量は、私が作るのは難しいや」
　どこかで麺を買うか、お願いして専用のものを製造してもらうしかない。まだ、小麦粉を使って作れるうどんの方が現実味はあるだろう。
　異世界で日本の料理を作るというのは、なかなかに難しいのだ。
　ため息をひとつ吐きつつも、アリアの頭の中ではあーでもない、こーでもないと、しばらく議論が続くだろう。

　じゅわあぁっという焼き音に目を向けたカミルは、それに似つかわしくない表情のアリアを見てしまった。
　ぱちぱちと目を瞬かせてから、声をかける。
「アリア、卵焼きを作りながら考え事か？」
　そんなアリアはといえば、ふいに呼ばれてハッとした。
（そうだった、今は仕事中だった！）
　考え込んでいたけれど、ここはしあわせ食堂の厨房で、今はオーダーのあった卵焼きを作っている最中だ。
　以前うっかり砂糖と塩を間違えてしまうという凡ミスをしてしまったのに、気を抜いてしまうなんてと自分を叱咤する。
「ごめん、カミル。失敗するわけにはいかないもんね」
「いや、そこはそんな心配してないけどな」
「そう？」
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表紙・目次

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