しあわせ食堂の異世界ご飯4
 世界の料理が食べられていた日本とは違って、この世界では実際にその地方に行かなければ食べられない料理がとても多い。
(味噌を使うっていうことは、東南の方にある島国かな?)
 アリアがいつも味噌を仕入れていた地域で、味噌を扱っている中で一番ジェーロとも近い。とはいえ、移動しようとすればエストレーラより遠いのでかなりの時間がかかる。
「門番さん、お母様の作っていた料理の名前を伺ってもいいですか?」
「あー……実は、知らないんです。特に料理を名前で呼んだりはしていなかったので」
 身近にありすぎると逆に知らないものですねと、門番は苦笑した。
「どんぶりにスープと一緒に入った長細くて平べったいものを食べていたんですよ。ちょっともちもちっとしてるんですが、これがまた絶品でして。特に寒い日には、それが出るとすごく嬉しかったのを覚えています」
 アリアさんにもぜひ食べてほしいですと、門番は言う。
「なるほど……確かに、それは美味しそうです」
 門番の説明を聞いて、アリアは意味深に頷いた。

 ***

 アリアが味噌を手に入れて、一週間ほど経ったころ。
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