しあわせ食堂の異世界ご飯4
 人だかりをよくよく観察してみると、行列のできている場所には新しい飲食店の屋台があった。
 どうやらそこでお昼を購入しているようで、その分しあわせ食堂に人があまりきていないようだ。
「カミルが何も言ってなかったから、きっと今日の朝できたんだろうね」
 仕入れのときに屋台の話題はなかったので、きっと今日できてすぐに人が群がったのだろう。屋台は飲食店に比べると、購入のハードルがとても低い。
 売買の様子が見えているし、店にくらべると値段も安い。加えてすぐに買えるというメリットもあるが、今回は買うのに時間がかかりそうだ。
「どれ、並んでみるかね」
 敵情視察とまでは言わないけれど、やはり人気の屋台ができたとあっては黙っていられない。
 しっかり食べて、こちらも何か対策を立てなければとエマは意気込む。
 アリアがくるまでは閑古鳥が鳴くような定食屋だったのに、やはり満員のお客さんを見てしまったら、もう昔に戻りたいとは思えない。
「お父さんのしあわせ食堂を守れたら、それでいいと思っていたんだけどねぇ」
 人間、欲が出るものだ。
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