しあわせ食堂の異世界ご飯4
 そのまま食べると味気ないパンだけれど、肉についたタレが濃い味でいっそう美味しく感じることができる。
 ……これは確かに売れると、認めざるを得ない。
「美味しいけど、私はアリアちゃんの料理が一番だからね! それに、ロスタン公爵っていう人も詳しくは知らないし……」
 エマが知っているロスタン公爵のことといえば、本当に噂程度のものだ。
 ロスタン公爵は前皇帝であるリベルトの父の弟で、民衆から支持を得て皇帝の座に就こうとしている。
 まあ、そんな野心家であるということくらいだけれど。
「私たちは暮らしやすければどっちが皇帝でも構いやしないけどねぇ」
 戦争をして男手を持っていくとか、とんでもなく税が高いとか、そういうことがなければいい。
 平和に暮らしたいというのが、エマたち庶民の願いだ。
「さすがにそろそろ戻らないとだね」
 これ以上遅くなったら、シャルルに心配をかけてしまう。エマは駆け足でしあわせ食堂へと戻った。


 しあわせ食堂の厨房では、カミルがカレーの残りが何人前になるか量を見ているところだった。
「ざっと七人前くらいかな?」
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