しあわせ食堂の異世界ご飯5
「そうだったんですね」
 それならば、仕事をするというのはいい手だろうとアリアは思う。するとすぐに、フローラの答えを聞いたもうひとりの女性も手を挙げた。
「私も一緒です、旦那ばっかり楽しそうに飲んで帰ってきて。だから私も働いてやろうと思ったんですよ!」
「な、なるほど……」
 もうひとりの女性は、かなり強気のようだ。アリアは思わず苦笑したが、エマは豪快に笑ってみせた。
「そうかいそうかい、大変だったんだね。あんたは、えーっと……グレーテだね」
「ああ、自己紹介してませんでしたね。グレーテ、四十一歳。子供は四人で、もう全員働きに出て手がかからなくなったもんですから、私も働こうと思ったんです」
 家にひとりでいても暇ですからと、グレーテが言う。彼女は長年家事をしてきたこともあって、料理の腕にも自信があるようだ。
 グレーテは、黒髪を後ろでひとまとめにしていて、とてもハキハキと話す女性だ。なにかあればきっちり意見を言ってくれそうで、職場にひとりいると頼もしい。
 三人ともが前向きに働きたいと思っていることに、アリアはほっと胸をなでおろす。
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