しあわせ食堂の異世界ご飯５
　カミルとリズのキラキラした視線がアリアに突き刺さり、思わず「やってみる？」と声をかけてしまう。
「やる！」
「やります！」
　ふたりの声が見事にハモったので、アリアは新しい林檎を倉庫から持ってきた。簡単に包丁の扱い方を教えて、あとは各自でやってもらう。
　林檎を手にしたふたりは瞬時に真剣な目になり、ゆっくり、ゆっくーり、包丁で林檎の表面を切り始めた。

　ふたりが林檎の飾り切りに夢中になってしまったので、お昼の用意は自分で進めるかとアリアは食材に手を伸ばす。
「見事なものだな」
　リントが目を細めるようにして、アリアの飾り切りした林檎を見る。
「……いえ、リントさんのミンチのほうが見事ですよ」
　アリアが飾り切りを終わらせるよりも早く、リントは肉のミンチ作業を終わらせていた。リズより何倍も早く、手際がいい。そして悔しがっていた通り、カミルよりも完璧だ。
「俺はこういったことが得意なだけだ。アリアみたいに繊細な切り方や、美味しい味付けはできる気がしないからな」
　逆にこんなことしかできないと、リントは肩をすくめた。
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表紙・目次

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