しあわせ食堂の異世界ご飯5
 今さっきとは打って変わり、楽しそうに頷き始めたアリアに、リントは「今度はなにを考えてる?」と優しく問いかける。
「え? あ……っ、近いですよ? リントさん!」
 気づけばリントの顔がすぐ目の前にあり、アリアは動揺した声をあげる。
「俺が目の前にいるのに、違う人のことを考えていたから……か?」
(ちょっ、それは焼きもちじゃないですかリントさん!)
 思いがけず素直に告げられてしまった言葉に、耳まで一気に赤くなる。夏の暑さなんて気にならないくらいに、頬が熱を持つ。
「違いますって! お礼に、シャルルの好物を作ってあげようって。そう思ってただけですよ?」
「……そうか」
 リントの返事に、少しの間があった。
 なにか不服だったのだろうかと考え、アリアはひとつの可能性を思い浮かべる。もしかして、リントはおにぎりを食べたいのではないか――と。
(そういえば、最近作ってない……)
 リントが好きな料理は、アリアが初めて彼に振る舞ったおにぎりなのだ。中でもお気に入りの具材は、じゃことカリカリ梅。
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