しあわせ食堂の異世界ご飯5
 ぐぐっと力を入れてリントの手を防ぐと、あきらめてくれたのか手が離れていく。しかしそれにほっとしたのは束の間で、アリアの手の甲に柔らかい感触がした。
「……えっ!?」
「アリアが顔を見せないからだ」
 リントはアリアの両手が使えないのをいいことに、手の甲にキスをし、さらに指先、こめかみとその場所を増やしていく。
(は、恥ずかしい……っ)
「うぅ……、ずるいですよリントさん」
 アリアがゆっくり手を退けると、楽しそうに笑みを浮かべるリントの顔が見えた。
「もっと隠しててもいいぞ?」
「嫌ですよ、もう。リントさんには敵いそうもないです、お手上げです」
 手を上げて降参の意を示すと、リントがゆっくり顔を近づけてきた。そのまま瞳が閉じられていくのを見て、アリアも同じように目をつぶる。
 頬にリントの大きな手が添えられて、そのまま唇が重なり合う。ちゅっと小さくリップ音が耳に届くと、心臓が大きく跳ねる。
 久しぶりの甘い雰囲気に、いつも以上にドキドキしてしまうのだ。
「ん……」
「可愛いな、アリア」
 互いの吐息を近くで感じて目を開けると、リントの綺麗な青色の瞳と視線が合った。
「――っ!」
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