しあわせ食堂の異世界ご飯5
 恥ずかしさで慌てて離れようと体をよじってみたけれど、いつの間にかリントの腕が背中に回されていてそれができない。
(こんなの、反則だ)
 ぐいぐいリントの胸を押して抜け出そうとするも、びくともしない。
「久しぶりでアリアが足りないから、もう少し大人しくしててくれ」
「…………はい」
 顔から湯気が出そうなまま、アリアは大人しくリントにもたれかかる。その状況に満足して、リントも体から力を抜く。
「……アリアの心臓の音が、聞こえてくる」
「ふぇっ!? ちょ、なんでそんなに恥ずかしいことを言うんですかリントさん……っ」
 嬉しいけど、恥ずかしい。そんな気持ちをこらえつつ大人しく腕の中に納まっていたのに、まさか言葉で追い打ちをかけられるなんて思ってもいなかった。
「聞こえてきたんだから、仕方ないだろう」
「そ、それは……これだけ近いんだから、心臓の音だって聞こえます」
 その証拠に、耳を澄ますとアリアにもリントの心臓の音が聞こえてきた。トクトクトク……と、思いのほか速い鼓動。
「もしかして、リントさんも緊張してたりしますか?」
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