しあわせ食堂の異世界ご飯5
 目の前から歩いてくるのは、ドレスに身を包んだアリアと、侍女服のシャルル。
 姿勢を正し優雅に歩くその姿は、まるでどこかの国の姫君のよう。いつもの明るい笑顔ではなく、落ち着いた優しい表情がリズの印象に残る。

 思わず見惚れてしまい、ハッとする。
 このままだとアリアに見つかってしまうので、隠れなければと反射的に立ち上がる。別に見つかってはいけない理由はないのだけれど、そうしたほうがいいと思ったのだ。
 先ほどと同じように木の陰に隠れようとしたが、ちょうど侍女が戻ってきたので出てきたドアへと飛び込んだ。
「リズベット様!?」
 今度は何事ですかと侍女が言うよりも早く、リズはアリアを示して誰だと問いかける。
「えぇ……? ああ、あの方ですね! リベルト陛下の妃候補のひとりとしていらっしゃった、エストレーラの第二王女アリア・エストレーラ様ですよ」
「エストレーラ王国の王女様!?」
 リントに続きアリアも王族だったということを知り、リズは開いた口がふさがらない。そしてどうして街で料理人なんてしているのだ、と。
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