しあわせ食堂の異世界ご飯5
(しかも、わたしの家だけがリントお兄さまと敵対しているなんて……)
 そう考えて、「あっ」と声をあげる。
「じゃあ、アリアお姉さまがリントお兄さまの婚約者になれないのは……皇帝になりたい、お父さまのせい……?」
 侍女に聞こえないほどの小さな声で呟き、リズはぞっとした。そして頭の中で、どうしてこうなっているのかと推測がどんどん浮かんでくる。
 リズは逃げるように、侍女とともにその場を後にした。

 ***

 しあわせ食堂から十分ほど歩いたところに、いろいろな食材が手に入る市場がある。毎朝賑わいを見せていて、しあわせ食堂で使う食材の仕入れもほとんどが市場だ。
 王城でドレスの採寸などすべてを終えたアリアとシャルルは、帰りに食材を購入するためにやってきた。

 アリアが探している食材は、ずばり野菜だ。
「美しくドレスを着こなすために、まずは食の改善をしないと」
「すごいデザイナーでしたねぇ」
 隣を歩くシャルルが思い出して、くすくす笑う。
 本来であれば、デザイナーは着る人の体型に合わせてドレスを仕立てるものだ。それなのに、もう少し痩せろ!なんて。
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