しあわせ食堂の異世界ご飯5
 なんて思い出しながら、アリアはボウルに卵を割り、牛乳を入れ、塩を振ってかき混ぜていく。
 カミルはそれを見ながら、隣でソーセージを焼きつつ窯にパンを入れた。
「作り方さえ知っていれば誰でもうまくできるから、カミルも作ってみたらいいよ」
「準備は簡単なんだな」
「そう。あとは熱したフライパンにたっぷりバターを入れて、弱めの火にかける……っと」
 卵をフライパンに入れると、じゅわああぁっと食欲をそそる音が響く。カミルはごくりと唾を飲み込み、これからどうなるのか目が離せないでいる。
 アリアは木べらを手に取り、卵をすくいあげるようにゆっくり丁寧にかき混ぜていく。弱火にしているため、卵がすぐに固まってしまうことはない。
「バターのいい匂いがする」
「そう! これが食欲をそそるんだよね」
 早く食べたいと主張するカミルに、アリアは頷く。
 卵は完全に焼ける前にお皿に移すので、とろとろの半熟になってくれる。お皿を動かすとふるふる揺れて、ふわとろなのがひと目でわかる。
「あんまり焼かないんだな……。でも、そのせいか卵の色がいつもより淡くて綺麗だ」
「うん。淡い黄色と白が美味しそうだよね」
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