しあわせ食堂の異世界ご飯5
 焼いた食パン、ソーセージ、卵、サラダと、ぱっと見た感じはどの家庭の朝食とも変わらない簡単なもの。
 ……なのに、キラキラしているように目に映るのはどうしてだろう。
 ああ、早く食べたい。
 それだけに脳内が支配されていくのを感じて、アリアの「どうぞ」という声を聞いた瞬間には卵をスプーンですくいあげ口の中へ入れていた。一番乗りだ。
「……っ!」
 口に入れた瞬間、濃厚なバターの香りと一緒に優しい卵の風味が体中を駆け巡る。そのクリーミーさには、思わず噛むのを忘れてしまったほどだ。
 レオンがいつも食べる卵のように固くないし、むしろ……まだ焼けていない状態の卵を食べようとなんて今まで考えたこともなかった。
「とろとろで、卵じゃないみたいだ」
 ごくんと飲み込んで、スプーンでもう一度すくう。すると、アリアが小皿に入った赤いソースをレオンの前に置いた。
「トマトケチャップと一緒に食べても美味しいですよ」
「あ、ありがとうございます! すごい、ソースまであるのか……。卵だけで、こんな上品な料理ができるなんて信じられません! 貴族の料理として出てきても、おかしくないです」
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