しあわせ食堂の異世界ご飯５

「そうですね。朝はパンだけど、手間だから焼いたりしないですし……」
　やっぱり店で出る食事は家とは違うと、フローラとグレーテが感動している。その様子を見て、アリアは確かにその通りだなとこの世界の生活事情を思い返す。
　王城で暮らしていたときは、王女であるアリアの食卓には焼き立てのパンが並んでいたけれど、庶民の場合は家にある窯を使ってパンを焼く、もしくは温めなければいけない。そのため、準備に時間がかかるので非常に手間なのだ。
（トースターでパンを焼くこともできないもんね）
　夜ならまだしも、朝から窯を使うなんて面倒なことはしたくない！　……というのが、この世界の女性の言い分だ。
「ジャムも美味しいです」
　フローラがトーストにたっぷり塗ったのは、定番の苺ジャムだ。
　果肉がほどよく残り、ジャムではあるけれど食べごたえもある。砂糖を少なめにして作ってあるので、たくさん食べても体形を気にしたりする必要はない。
「私も家で作ったことがあるんですけど、なかなかうまくいかなくて……」
　フローラは眉を下げながら、なにがいけなかったのかしら？と、首を傾げる。つられて、アリアも一緒に首を傾げる。