しあわせ食堂の異世界ご飯5
「「「そんなぁ……」」」
 どうにかカレーにありつけた人は喜ぶが、五人より後に並んでいた人たちはがっくり肩を落とす。今日はどうしてもカレーが食べたかったのに!と、悔しそうにしている。
「またの来店をお待ちしています」
「はい、また来ます……」
 しぶしぶと列から離れて帰る人たちを見送ってから、シャルルは店内へ戻った。

「……ララちゃん、どうして隠れるの?」
「しぃー。駄目だよ、ナタリーちゃん。だって、シャルルお姉ちゃんの迷惑になっちゃうもん!」
 しあわせ食堂のすぐ近く、建物の陰に隠れた女の子がふたり。
 アリアの弟子であるリズと仲がよく、しあわせ食堂にもお母さんと一緒に来てくれるララとナタリーだ。
「なぽいたん食べたいのに……」
「それはお母さんと一緒じゃないと、無理だよ。ララお金もってないもん」
 ナタリーはアリアの作る『ナポリタン』が大好きで、来るといつも食べている。ただ、まだ舌っ足らずなのでちゃんと発音できていない。
『わんっ!』
「きゃっ」
「あ! 駄目だよ、くうちゃん。大人しくしてないと!」
 吠えたのは、ナタリーが抱いているクウという子犬だった。
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