しあわせ食堂の異世界ご飯5
 飼っていたけれど、餌をあげる余裕がなくなってしまったり、引っ越すことになったりした人が捨ててしまうのだ。
 そういう犬はたいてい薄汚れているので、ひと目で区別がつく。加えて、シャルルは騎士団に所属していたため野良犬の対応をしたことも何度かあった。
「くうちゃんっていうの」
「名前も付けたんだ。可愛いね」
 クウをナタリーから受け取ってシャルルが抱きあげると、やせ細っていて栄養が足りていないということがすぐにわかる。
「うーん……」
 シャルルはどうしたものかと、頭を悩ませる。
「クウちゃんは、ふたりのどっちかが飼うの?」
 それだったら、なにも心配することはない。けれど、ララとナタリーのふたりは無言になって俯いてゆっくり首を振った。
 ふたりとも、親から犬を飼う許可は得られなかったようだ。これもよくあることで、エストレーラでも同じようなことは多々あった。
 かといって、シャルルからふたりに捨ててきなさいと言うのも憚られる。なにより、クウのつぶらな瞳が捨てないでとシャルルに訴えている。
 規律などに厳しいシャルルとはいえ、可愛いものは好きだ。
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