しあわせ食堂の異世界ご飯5
 どうか願わくは……可愛いままのクウでいますように。そんなことを、アリアは心の中でひっそり祈るのだった。

 場所を裏庭から店内へ移したら、今度はアリアたちの昼食だ。ちょうどエマも帰ってきたので、全員がテーブルに着いた。
 アリアとカミルは料理を運ぶために厨房へ来たのだが、いかんせんクウを見ていたためせっかくの唐揚げが冷めてしまっていた……。
「あっちゃー……」
 カミルが頭をかきながら、どうするか思案している。悩みつつも、ひょいっとつまんで口へ入れ、「美味い!」とひと言。
「このまま出してもよさそうだ!」
 冷めていても十分と判断したようだが、アリアからストップがかかる。
「カミル、唐揚げは二度揚げしても美味しくなるんだよ」
「にどあげ……!?」
 その発想はなかったようで、カミルは雷にでも打たれたように衝撃を受けている。そして震えながら、ごくりと唾を飲んだ。
「この美味い唐揚げが、もっと美味くなる……ってことか?」
「ふふ、気づいちゃいましたか」
「気づいちゃいましたよ……」
 思わずふたりから、ふふふと笑みがもれる。
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