しあわせ食堂の異世界ご飯５

　きっと動きたくてうずうずしているのだろうけれど、相手が貴族ということもあって下手に動くことができないのだ。おそらく、親からも絶対に不敬になるようなことはするなと言いつけられているだろう。
　それを考えると少々不憫にも思えてしまうが、身分制度のあるこの世界ではいたしかたない。この学園を通して、その仕組みに慣れてもらいたい。
　アリアは隣に座っているシャルルに、声を小さくして話しかける。
「なんだか初々しくていいわね」
「私も騎士団の入団式を思い出します」
　シャルルも今でこそなんでもこなしてしまうけれど、新人のときは大変だったのだと苦笑する。
「でも、先輩がいない分は楽かもしれませんね……」
　騎士団では雑用から始めるため、入団後すぐは仕事がたくさんある上に体を鍛えるトレーニングメニューもあって大変なのだ。
　一日が終わると疲れ果てて、一瞬で寝てしまう。
　そのため遊びに行く時間などはまったく取れず、たまの休日も自主トレーニングや部屋の掃除などで消えてしまうことが多かったと肩を落とす。