しあわせ食堂の異世界ご飯5
「そうです。今までは家のことをひとりでやっていたので手一杯だったんですが、夫からしあわせ食堂の料理が家でも食べられるようになるなら家事を手伝うと言われまして……お恥ずかしいような理由ですが」
 フローラは夫の言ったことを思い出し、情けなくなってしまったのか俯く。
「本当は、そんなことがなくても手伝ってくれたらいいんですが……」
「男なんて、どこもそんなもんだよ。家事を手伝ってくれるっていうなら、いいじゃないかい」
「そうですね……」
 エマとフローラのやり取りを見て、アリアはどこの世界も似たような悩みはあるものだなと思う。
 アリアの前世――日本には、働く女性はとても多かった。けれど、この世界では結婚後に外へ働きに出る人はそこまで多くない。
「フローラさんは、家にいるよりも働きたいと思ったんですか?」
 もし夫から、『しあわせ食堂の料理が食べたいから働いてこい!』なんて言われていたらとんでもない。アリアはそんなことを考えて質問をしたのだが、フローラはすぐに肯定した。
「はい。夫は職場の人と飲みに行ったり楽しそうにしているので、私も家にいるばかりではなく外へ出たいと思ったんです」
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