我妻教育3
突然で、現実味がなくて、曖昧なままで。
あまりにも強引で、非現実的な婚姻届は、あたしのアパートで厳重に保管されている。

それよりも今は現実。仕事しなきゃ。
考えている暇はない。


元お嬢様が聞いてあきれる。

啓志郎くんのお祖母さんにも心配されたように、生活は苦しい。

非正規社員で残業込みでも手取り月15万には届かず。
雑誌にレシピを掲載しても原稿料なんて微々たるもの(お金のためにやってる訳じゃないから、そこは良いんだけど)。
いまだに大学時代バイトしてたフレンチレストランで週2はアルバイト兼務。

それでやっとワンルームのアパートで、何とかやりくりしてる。

頼るところはどこにもない。
義父も今は雇われ社員で、実家に力もなければ、実家すらもうない。

どうしてこんなことになってしまったの?

今でも思う。
実家がもうないなんて、夢だったんじゃないかって。
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