我妻教育3
「垣津端さんもどうぞ。
お休みいただいて、ありがとうございましたぁ」

昼休みのスタッフルーム。

講師の女性社員が箱に入ったお土産のお菓子を配っている。
彼女は昨日まで5日間有休とって、北海道に旅行していた。

「ありがとうございます。
北海道でしたよね?楽しかったですか?」
お菓子を一つ、有り難く受け取る。

「はい、とっても♪」
キラキラの笑顔が眩しい。

そりゃ楽しかっただろうな、彼氏と旅行なんだって、出発前からウキウキだったもんね。

「良かったですね。台風来なくて良かったですね」

「ほんと!来週だったら危なかったかも。
飛行機飛ばなかったら帰れないとこだったしね。
ま、それでも良かったけどね~なんて」
フフフと上機嫌の彼女は、他のスタッフにもお菓子を配り回る。

思わず笑顔がうつる。
充実してたんだろうなぁ。
いいなぁ~、うらやましい。

あたしにもそろそろそういう浮いた話が欲しいところ。
今年で24歳になる。
友だちの結婚式にも呼ばれるようになってきた。

だからと言って、松園寺グループの御曹司は無いよね。無い無い。
あたしは一般人なんだから。


スマホに届いた新しいメッセージを確認。
これも恋人からだったらすごくウキウキするんだろうな。

〔送ったよ~!未礼に頼まれてた大吟醸!
あと、一緒に夏の生酒も!美味しいよ!〕

相手が父親(義父)だなんて枯れてる。
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