我妻教育3
正社員への希望は潰えた。

呆然としたまま何とか口を開く。
「そう…ですか。ですよね」

「会社として、今後、契約社員には調理に関わらせないことになりました。
垣津端さんには、電話対応、受付、データ入力や経理関係の事務作業のみに専念していただきます」

「…事務作業のみ…ですか…」

「垣津端さんとしたら物足りないでしょうし、正直このままうちで働いてもらっても、能力が発揮できずに勿体ないと思います。
今後どうするか、ゆっくり考えてみてもらえる?」

「…はい」

「有休まだ使ってなかったでしょう?
教室に出ない分、時間に余裕も出るでしょうから、休みも取って頂戴ね」

口調は優しい。だけど社長の口調からは、辞めて欲しいという意図を感じる。
キンポウゲに睨まれた代償は大きい。

今の契約社員としての契約は年末まで。
来年、契約社員として再更新されたとしても、事務作業のみ。
講師になりたくて、ここにいるのに…。

また仕事失うの?
やっと慣れてきたところだったのに。
どうして?
あたしばっかりこんな目に…

落胆と、今後の不安で体から力が抜けて、目眩がする。

結局、事務仕事のみで定時をむかえた。
それから、夏休みという名目で、週明けに有休を(月、火曜日の連休で)取得した。


「ヤケドなんて、大したことないんでしょ?垣津端さんは悪くないよ!」
って社員たちは皆言ってくれるけど。
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