我妻教育3
優留ちゃんは、ニッと口角を上げて、グラスを掲げて、カチンとあたしのグラスに合わせた。
小さな仕草、一つ一つが自然体でカッコいい。

すると、新香さんも、優留ちゃんと同じようにあたしのグラスにグラスをあてて、フワリと笑う。
こっちは、なんて上品なんだろう。


「ああ、そういや未礼、啓志郎とは会ったか?あいつ帰ってきてるだろ?」

デザートのクレームブリュレを食べてたら、優留ちゃんが急に思い出したように、啓志郎くんの話題をふってきた。

「うん。会ったよ~。
一緒にチヨさんのお見舞いに行って。
それから、啓志郎くんうちの料理教室にも来てくれて。
あ。マイラちゃんも一緒に」
話の流れで報告する。

優留ちゃんははぁ?と眉間にシワをよせた。
「マイラが料理教室?行く必要ないだろ。
マイラあいつ料理めちゃくちゃ上手だぞ」

「え、得意なの!?全然そんな風に見えなかったけど!」

「マイラのやつ、啓志郎に取り入るのに必死だな。
どうも婚約の話も進展してないみたいだし、焦ってんだろうな~」

啓志郎くんに、取り入る為に…?
料理上手なのに…?

もやっと嫌な感じがした。

ヤケドをしたのは、もしかして……

――いや、まさか、そんな。

モデルの仕事があるのに、わざとケガなんてしないよね。
啓志郎くんと一緒に居たかっただけだよね。

頭を振る。

あたしったら、自分が荒んでるからって、変なこと考えちゃダメだ。


「…進展しなくていいわ」
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