我妻教育3
「あ、いえ。若い経営者の方って、外車に乗ってるんだと思ってました。
勝手なイメージですけど」
ペコっと謝罪。

バリバリの高級外車(スポーツカー)に乗ってるんだと思ってたから意外。国産車。

「ははは。そういうイメージか」と笑いながら、扉を開けてくれる。

「外車に乗ってたこともあったけど。
仕事でもよく乗るから、結局、国産車の方が故障しなくていいんだよね」

堅実なのかな?会釈して車に乗り込む。

「未礼ちゃんて、料理の仕事してるんだったよね」
シートベルトをしながら亀集院さんが聞いてきた。

「はい」

「連絡する。美味しいもの食べに行こう」

「あ、はい、是非~」
社交辞令だと思ったから安易に返事した。

「いつ空いてる?」

「はい?」

「俺の都合は…」
スマホでスケジュールを調べ出した。
日に焼けた筋ばった指が、サーッとスマホの液晶を滑る。

「…え?本気ですか?」
本気で食事行くの?

「行くって言ったよね?
社交辞令のつもりだったでしょ?
そうはさせないよ」
ニコッと子どもみたいに笑う。

大人っぽい男っぽい強気の顔つきの人が、そんな顔して笑うんだ。

思わずポカンと見入ってしまう。

「えっと、あの、亀集院さん、…ご存知ですよね?あたしの父のこと…」

カキツバタ商事の社長が変わった一件は知ってるはず。
社交辞令は貴方の方でしょう?
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