我妻教育3
そつなく挨拶をする啓志郎くんに、女性陣は大喜び。

「ねえ、啓志郎さん、一緒に写真撮って!!」

「ここじゃなんだから、家に入って!濡れるでしょ」

「啓志郎くんも、未礼ちゃんと一緒にゆっくりしていってね!」

「いえ、本日はご挨拶だけ。
私は帰りの列車の時間もありますのでそろそろお暇を…」

「えーーー!やだーー!!泊まっていってよーー!!
バァバの料理美味しいよ!」

騒ぐ女性たちの声を聞きつけて山指さんの息子さんが現れた。
スマホ見ながら。

「電車、止まりましたよ」

「何と?」

「台風の影響で、もう今日は電車ないです。
ほら、まわり山でしょ。土砂崩れの危険もありますから。
車も通行止めになりますし、今日は帰れないですね」

「左様ですか…」

「やったー!!早く入って入って!」
喜んだお孫ちゃんたちに背を押される。

「申し訳ございません。一晩、お世話になります」
啓志郎くんは、一礼してから山指さんのお宅にお邪魔した。

あたしが強引に呼んでしまったばっかりに、帰れなくなってしまった。

「ごめん、啓志郎くん。この後の予定とか大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

なら、いいけど…。


山指さんの母屋で、あたしは奥さんと一緒に酒粕料理を作る。

台所にまで、楽しげな声が聞こえてくる。
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