我妻教育3
さすがにキンポウゲと比べたら知名度は雲泥の差。
それでもうちは地元では知られた料理教室だ。

初心者(お子様)から、カフェなどお店を持ちたい人まで、カリキュラムは多彩。


「垣津端さんは、そこでお料理の先生をされているの?」

「いえ、お恥ずかしながら講師ではなく、今は講師アシスタントをしています」

「アシスタント?先生のお手伝いということかしら?」

「はい。手伝いながら、講師になる勉強をさせていただいています」

目先の目標は正社員雇用。いずれは講師に。
料理を発信していく仕事をしたいっていう夢のささやかな第一歩だ。


「まぁ、そうなの。
お一人で生活なさってるの?」

会長夫人、やけにグイグイくるなぁ…
そんなにあたしのこと知りたい?

「はい、一人暮らししていますけど…?」
それが何?

会長夫人の笑顔が、含み笑いに変わった。

「いやね、アシスタントとおっしゃったでしょ?
失礼ながら、生活はできているの?ご実家の援助はおあり?」


「おばあ様、失礼です」
聞くに耐えなかったのか、啓志郎くんが割って入ってきた。

啓志郎くんを「いいの」と制し、
「そうですね、生活は苦しいですけど、一人でやれています」
聞かれたことにはお答えした。

本当のことだし。
別に気にしていないけど……

「ですけど、お一人だと大変でしょう?
何かお手伝いできることがあれば、おっしゃってね。
これも何かのご縁ですので、わたくしで良ければ、お世話させていただきますよ」
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