我妻教育3
ちょうどお昼時。

空港の滑走路を見渡すことができる展望デッキ。

飛行機の離着陸に、大きなカメラを向ける人や、興奮する子どもたちの声が楽しそうに響く。

カフェのテラス席のように、屋根とテーブルと椅子が設置されているフリースペースがある。

そこに手作りのお弁当。ピクニックみたいだ。

あたしの手料理をリクエストしてくれた啓志郎くんのために、気合い入れて作ってきた。
中々良い出来だと思う。

「はい、召し上がれ~♪」
啓志郎くんの前で蓋を開けると、
「美味しそうだ」と啓志郎くんの顔が明るんだ。
ポーカーフェイスが崩れる瞬間。
見るたびに嬉しさが募る。

「いただきます」
しっかりと手を合わせてから箸を手に持つ。
相変わらずの上品な所作。

「どうぞ♪ガブッといっちゃって♪」

メインは酒粕漬けの豚のスペアリブ。
食べやすいように骨からは外しておいたけど。
やっぱ男子といえば、がっつり肉でしょ♪

口に入れてすぐ、驚いたように目が見開いた。
「柔らかくて美味しいな」
目が輝き、頬の緊張感がほどけて、ゆるむ。

「良かった♪」
あたしも一緒に食べる。

「出発前にこんなに美味しいものを食べたら、名残惜しくなるな…」
急に、啓志郎くんがしんみりと呟いた。

「また、いつでも作ってあげるよ~♪」

あたしの言葉を受けて、笑顔を見せる。
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