アラサーですが異世界で婚活はじめます
身支度を終えて食堂へ降りると、子爵と夫人がすでに着席していた。
「おはよう、ミレイ」
50代の子爵は、柔らかで豊かな黒髪を後ろに撫でつけており、優しい瞳にすっと通った鼻、男性にしては白い肌が若々しい印象を与えている。
口ひげを生やした上品な口許に微笑みを湛えて、子爵は軽くお辞儀をする美鈴に席に着くよう促した。
「おはようございます。いいお天気ですね」
美鈴は自分の席に着席すると、子爵夫妻ににっこりと微笑みかけた。
伯爵令息の手紙のこともあってか、子爵はいつもと異なりどことなく落ち着かない様子だったが、反対に子爵夫人はいつも以上にゆったりと優雅な所作でクリーム入りのコーヒーを味わっている。
「ミレイ。その、昨夜は……。舞踏会はどうたったね……?」
初めて社交界に出た養女を気遣ってか、子爵はいくぶんヴォリュームを落とした声で美鈴に尋ねた。
「素晴らしい催しでしたわ。とても華やかでまるで夢のようでした……。侯爵夫人ともお会いできましたし」
美鈴の答えに子爵は安心したようにホッと息を吐き、満足そうに何度も頷いた。
「そ、そうか……! それはよかった」
「ミレイのことですもの! 心配をなさることはなかったのよ」
同意を求めるように子爵夫人が美鈴の方を見て頷いた。
「この数か月でダンスも礼儀作法もすべて身につけてしまったし、昨日はリオネルも一緒だったのだから」
「うん……ま、まあ、確かに……心配など、私もしていないのだが」
『心配していない』といいつつ、少々焦り気味の子爵は、机の上に一枚の封書をそっと乗せた。
「ミレイ、ジャネットから聞いていると思うが、今朝、ドパルデュー家の令息から手紙が来てな……」
「おはよう、ミレイ」
50代の子爵は、柔らかで豊かな黒髪を後ろに撫でつけており、優しい瞳にすっと通った鼻、男性にしては白い肌が若々しい印象を与えている。
口ひげを生やした上品な口許に微笑みを湛えて、子爵は軽くお辞儀をする美鈴に席に着くよう促した。
「おはようございます。いいお天気ですね」
美鈴は自分の席に着席すると、子爵夫妻ににっこりと微笑みかけた。
伯爵令息の手紙のこともあってか、子爵はいつもと異なりどことなく落ち着かない様子だったが、反対に子爵夫人はいつも以上にゆったりと優雅な所作でクリーム入りのコーヒーを味わっている。
「ミレイ。その、昨夜は……。舞踏会はどうたったね……?」
初めて社交界に出た養女を気遣ってか、子爵はいくぶんヴォリュームを落とした声で美鈴に尋ねた。
「素晴らしい催しでしたわ。とても華やかでまるで夢のようでした……。侯爵夫人ともお会いできましたし」
美鈴の答えに子爵は安心したようにホッと息を吐き、満足そうに何度も頷いた。
「そ、そうか……! それはよかった」
「ミレイのことですもの! 心配をなさることはなかったのよ」
同意を求めるように子爵夫人が美鈴の方を見て頷いた。
「この数か月でダンスも礼儀作法もすべて身につけてしまったし、昨日はリオネルも一緒だったのだから」
「うん……ま、まあ、確かに……心配など、私もしていないのだが」
『心配していない』といいつつ、少々焦り気味の子爵は、机の上に一枚の封書をそっと乗せた。
「ミレイ、ジャネットから聞いていると思うが、今朝、ドパルデュー家の令息から手紙が来てな……」