アラサーですが異世界で婚活はじめます
09 再会と抱擁
「お久しぶりです、アリアンヌ嬢」

 馬車を停め車を降りようとしたフェリクスを、アリアンヌは片手を優雅に上げて制した。

「いいのよ、そのままで。久しぶりに貴方の顔が見られて嬉しいわ。……素敵な方とご一緒なのね?」

「この方は、ルクリュ子爵家のミレイ嬢です。森で偶々(たまたま)お会いして……彼女のお連れの方を探しているところなのですが」

 アリアンヌは小首を傾げて興味深そうに美鈴を上から下まで眺めた後、花のような笑顔で美鈴に微笑みかけた。

「わたくしは、アリアンヌ・ド・ヴィリエ……お会いできて嬉しいわ。……白百合のように可憐な方ね」

 アリアンヌは軽く会釈してから、よく通る澄んだ声で自ら名乗った。

「ヴィリエ公爵令嬢……もったいないお言葉を頂いて……わたくしの方こそ、お会いできて光栄です」

 ヴィリエ、という家名には聞き覚えがあった。3日後の舞踏会を主催者する侯爵夫人の親戚筋にあたる公爵家であり、パリスイの貴族階級でも最上流の家系だ。
 深く頭をさげながら、美鈴はアリアンヌに答えた。

「ルクリュ子爵家のご令嬢なら、「お連れの方」というのは、きっとリオネルね。先ほど、この先で会って少しお話ししたのよ。……フフっ」

 可笑しくて堪らないという様子で笑いながら、アリアンヌは続けた。
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