アラサーですが異世界で婚活はじめます
「……ミレイ……!?」

 探し続けた美鈴が突然現れた驚きに目を(みは)ったリオネルだったが、水たまりで足や衣服が濡れるのも構わず、フェリクスの馬車に向かって全力疾走で並木道を駆けて来る。

 一方、駆け寄ってくるリオネルの姿を認めたフェリクスは、見事な手綱さばきで馬を制してスピードを緩め、リオネルの数メートル手前で、馬車を完全に停止させた。

 息をきらせて馬車に駆け寄ったリオネルは、心底安心したという表情でホーッと息を漏らすと、うっすらと瞳に涙を浮かべた美鈴の顔を見て、彼女に優しく微笑みかけた。

「無事で……よかった」

 ポツリとそう漏らすと、リオネルは直ぐに馬車の上のフェリクスに対して帽子を取り、深く頭を垂れた。

「アルノー伯爵……この度は私の身内が大変なご迷惑をおかけしたようで……ミレイを私の元に送り届けてくださり、誠にありがとうございます」

 頭を上げたリオネルの視線は、ひたとフェリクスの瞳に据えられており、それは美鈴がかつて見たことのない真剣な、強い眼差しだった。

「いえ、森の中で偶然行き会って。私は大したことはしておりません。それよりも……」

 フェリクスは横にいる美鈴に顔を向けた。

「よかった。お連れの方と引き合わせることができて」
 穏やかな声でそう言うと、ふっと美しい目を細めてフェリクスは美鈴に微笑んだ。

「アルノー伯……いえ、フェリクス様、本当にありがとうございました……」
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