私が朝 泣いた理由
ギリギリで飛び乗った車内はいつものようにもうほとんど人は乗っていなかった。



私はいつものようにイスのど真ん中に座る。



彼はど真ん中に座るのが不思議らしい。



端っこがいいんだって。




ピリピリピリピリ



「いいんだよ~この曲」


フィルムを外しCDを取り出す。



「うわぁ~出た~」


「最高の音質できくにはこれが一番なの!」



ちょっと膨れた彼は年期の入ったCDプレイヤーにCDを入れた。



「なぁ~お前も聴いてよ。超いいんだから」


「んん…いい!」



キッパリ断った私にまた頬を膨らませてイヤホンをつけた。




彼はよく頬を膨らませる。それが可愛くておかしくて、よく意地悪を言ってしまう。



気持ちはありがたいけど、電車の中はガタンゴトンって音と窓から見える景色が心地よくて…




それにあなたがずーっと手つないでてくれるんだもん。



外では繋いでくれないのに。



だから、音楽よりこの空間に浸りたいんだ。



窓から見える木々は電車の風圧で踊ってるように見えた。



私がこの曲をちゃんと聴いたのはずっと後になってからだった…
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