私が朝 泣いた理由
「何かって?」




耳元で聞こえる輝の声はとても心地好い。




「会社で色んな人と出会ったり、色んな経験したり。学生にはわかんないこといっぱいするはず。だから……」



「なに?」



「いちいち小さい事でヤキモチとか妬きそうで…」



「あははっ!そんなことかよ〜」




笑いながら輝は私の目を見つめてきた。




「カオルが心配するようなことは俺何にもしないよ?」




輝の瞳があまりにもキレイでつい目をそらし背を向けてしまった。



「わかってる!ちゃんと信じてる。あ、それにほら、勉強手ぇ抜いちゃったら親にも申し訳ないし…」


輝が後ろからギュッと抱きしめてきた。



『もう何も言わなくていいよ』って言ってるみたいに無言で頭を優しく撫でてくれた。



断る理由なんて無いはずなのに不安ばかりが溢れ出してきてる。




「律儀だなーカオルは。わかったよ、カオルが来年ちゃんと就職決まったらさっきと同じことまたいうからな」




申し訳なさと嬉しさと不安とがいっぱいになって涙が出てきた。




コクリと頷いた。




頬にキスをしてくれた。




西日が暑いくらい部屋に差し込んで、その色は切ないくらいにオレンジだった。



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