キミの足が魅惑的だから
 ピピピピッという目覚ましの音で、私は目が覚めた。

「あ……れ?」
 散々、人を組み敷いて大暴れして隣で寝た男が居ない。長い髪をかき上げて、なんとなくシーツに手を触れれば、冷たかった。

 夢だった? わけない。下半身の怠さと、太腿の筋肉痛……さらには股には痛みがある。翔太とセックスしたのは夢でも幻でもない。現実だ。

 何も言わずに帰ったんだ。そういえば、元彼もそうだったなあ。絶対に泊まらずに帰ってた……。

「ああ、そっか……あいつは私が二番目だったから」

 元カレを思い出して自嘲の笑みを浮かべた。最初は違ったかもしれないけど……総務課の林さん……だったかな? 旧姓が。あの子と出会ってからは、私はすぐに二番手へと降格したのだろう。

 元カレも、その妻も同じ職場――。今はなんとも思わなくなってきたけれど、やっぱり辛いよね。

 ってことは、あいつも……私が二番目ってこと。泊まらずに帰るなんて。社長の息子なんだから、婚約者や許嫁がいてもおかしくないし。

「……身体が痛い……。仕事に行きたくない」
 私はまた掛け布団に身体を戻した。

『さくら、まだ……寝ちゃだめ。もっと、しよ?』

 ずるい……あんな恰好いい顔で言われたら、断れるはずない。身体も締まってた。鍛えてるのかもしれない。

「だめだ、仕事に行かなきゃ」
 布団から出て、身体を見て驚いた。

 え? キスマークと噛み痕がひどい。体中、そこかしこにある。これではいつものスーツではいけない。スカートじゃあ、バレてしまう。足への執着が……やばいのが丸わかりだ。

「今日はパンツスーツかな」
 私は苦笑すると、クローゼットに足を向けた。
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