温かいこの場所で、君と
夏羽の呼吸が荒くなっていく。夏羽の手足が痺れ、胸がキリキリと痛む。視界はゆっくりと狭まっていった。

死んでしまうと感じるほどの苦しみに、夏羽はこのまま死んでしまえたらと願う。何もできない、生きる価値のない私なんていらない。夏羽は胸に手を当てる。

人々が夏羽の周りに集まり、夏羽に何か声をかけている。何を言っているのか、もう夏羽にはわからなかった。

生きていて、ごめんなさい。生まれてきて、ごめんなさい。

夏羽は心の中で呟き続ける。視線と羞恥から、早く死なせてと夏羽は神様に懇願した。しかし、神様は現れることはなかった。

「夏羽!!」

夏羽の耳にその人の声だけが聞こえる。ふわりと抱きしめられた温もり。まるでそれは太陽のようで、夏羽の心を落ち着かせていく。

「ミ、ゲル……」

ようやく過呼吸が治まり、夏羽はずっと抱きしめてくれていたミゲルの顔を見上げる。ミゲルの顔は、心配で満ちていた。

「Pasensya na(ごめんなさい)……あなたがくれた財布を、無くしてしまったの!」
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